隠さなきゃいけない“私”なんて、いない。

見た目疾患と自己肯定感

たとえば、髪の毛が抜けてしまうこと。
たとえば、乳がんで胸を失うこと。
たとえば、大きな手術痕があること。

こうした「見た目」に現れる疾患や状態は、ときに人の心に深く影を落とします。
外見が変わること自体がつらい、それももちろんありますが
“それを隠さなければならない空気”や、“他人の視線”の中で自分を保ち続けることが、
どれほど心をすり減らすかはなかなか理解されにくいものです。

「隠す」は守る手段。でも、それが心を傷つけることもある。

見た目疾患のある子どもや大人が日常的に直面するのは、「普通じゃない」という周囲からの視線です。
その視線を受けないようにするために、ウィッグや帽子、メイク、衣服、マスクなどを使って“隠す”という手段が選ばれることがあります。

もちろん、それは身を守るための大切な工夫です。
でも同時に、「隠す=見せてはいけない」「私はこのままではダメなのかもしれない」と、
無意識のうちに心の奥に刷り込まれてしまうこともあるのです。

実際、OneDiaryの活動を通じて行ったインタビューの中でも、こんな声が聞かれました。

「子どもの頃、親が“いじめられたらかわいそうだから”とウィッグを被せてくれたんです。親の愛情だってわかっています。でも、私は“私のままじゃダメなんだ”って思ってしまった。悲しかった。」

子どもはとても純粋です。
大人が良かれと思った“配慮”でも、「これは隠すべきものだ」というメッセージを、まっすぐに受け取ってしまうことがあるのです。

自己肯定感を支えるのは、「あるがまま」を否定しない空気

自己肯定感は、「自分は大切な存在だ」と思える感覚です。
見た目に変化があっても、「私には価値がある」と思える心の土台。

ですが、この感覚はとても繊細で、周囲の言葉や態度に左右されやすいものでもあります。

• 「気にしなければいいじゃない」
• 「見た目より中身が大事」
• 「今どきいいウィッグがあるし」

そんな言葉の奥に、「あなたの気持ちは大したことじゃない」と言われているように感じてしまう人もいます。
一方で、

• 「そのままでも素敵だよ」 • 「あなたがそう思うなら、それが正解」 • 「無理に笑わなくていいよ」

そんなふうに、“その人の気持ちを否定しない空気”に触れるだけで、ふっと肩の力が抜けて、心がゆるむ瞬間もあるのです。

「隠す」から「選ぶ」へ。アピアランスケアは“自分を生きる”ためのケア

隠すこと自体が悪いわけではありません。
大切なのは、「隠すかどうかを、自分で選べる」ということ。

たとえば、「今日はウィッグをつける」「今日は帽子だけにする」「今日はありのままで行く」――
そのすべてが、本人の選択であることが、心を守るカギになります。

群馬県前橋市にあるアピアランスケアサロンLINOLEAでは、
医療用ウィッグやヘッドスカーフ、パーソナルカラー診断などを通じて、
「外見を取り戻す」ことではなく、「自分らしく装うこと」を大切にしていますが、LINOLEAに来られる方の多くが、自分の変化に戸惑いを抱えています。
でも、その迷いや不安を無理に前向きに変えることはせず、
一人ひとりの思いをじっくり聞き、生活やライフスタイルに合った選択肢を一緒に探していく。

そうすることで、少しづつ自分らしさを考えていけるようになるのです。

自己肯定感は、「自分を選び続ける力」

見た目の変化を経験した人にとって、
自己肯定感とは「変わったけど、それでも私は私だと思える力。そんな自分も含めて自分を大事に思える力」です。

そしてそれは、決して一人で築くものではありません。
自分の気持ちに耳を傾けてくれる人、
どんな選択でも受け入れてくれる空気、
「あなたはあなたのままでいい」と伝えてくれる存在…。
そうした優しい関係性の中で、ゆっくりと回復していくものなのだと思います。

そのままのあなたでいいと思えることが自己肯定感につながる

見た目が変わることは、たしかに不安や痛みを伴います。
でも、それは「あなたの価値が変わる」ということではありません。

隠す日があってもいい。
がんばれない日があってもいい。
ただ、それでもそんな自分を優しく認めてあげること。
それが、自己肯定感の一番の土台なのではないでしょうか。

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